【新聞記事】繊維状マイクロプラスチックを簡易に検出・計測/自動化ツールを開発/いであ
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いであは、蛍光染色による繊維状マイクロプラスチック(MPs)の簡易検出法と、計測が困難な繊維状MPsを含めたMPsの計測情報を迅速で効率的に取得できる自動化ツールを開発した。繊維状MPsは環境や生態系への影響が懸念されており、これらの開発により、持続可能な社会の実現に貢献していく。
MPsは、環境中に存在する微細なプラスチックのことで一般的には5mm未満のものを指す。分解されにくく回収も困難なため、環境・生態系への影響が懸念されている。MPsの発生源は数多くあり、特に1回の洗濯で数百万本もの繊維状MPsが放出されているという報告もある。
こうした繊維状MPsの分析には、採取した試料を前処理後、MPs候補粒子を一粒ずつ手作業で拾い出し、それをフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)によって材質を判別し、画像解析ソフトなどでサイズ計測するなど、多くの作業時間と熟練した技術や労力を要していた。また既存の画像解析ソフトでは正確なサイズ計測が困難な上、FT-IRでの材質判定ができない場合もあった。
このため、同社は膨大な数の試料を効率よく迅速かつ安価に分析したいというニーズが多く潜在すると想定。繊維状MPsの簡易検出法と、デジタル画像から自動でMPs計測情報を取得できるツール開発を進めた。
簡易検出法では、細胞観察などに使用される蛍光染色色素のナイルレッド(NR)に着目。NRはMPs試料に混在する生物粒子にも染色してしまうことから、NRで蛍光染色した材質の異なる繊維状MPsに波長の異なる励起光を照射し、材質と発色との組み合わせを検証した。
供試材料はポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)のプラスチック4種類。綿繊維を対照材料とし、NRで染色した供試材料を蛍光顕微鏡下で観察した。観察時の励起光は紫、青紫、青、緑の4波長とした。
実験結果では、青い光で観察すると綿は蛍光せず、PETとPAは赤色に、PEとPPは黄色に蛍光した。青い光で黄色に蛍光したPEとPPは、青紫の光でそれぞれ青色と黄色に蛍光し、識別することができた。
一方、粒子情報取得ツールによる計測の自動化・省力化では、開発環境とデータ処理環境を通常業務で使うノートパソコンとし、取得する情報は、長軸径(長さ)、短軸径(幅)、面積、粒子の形状(破片・球・繊維)、色とした。複数の粒子かつ複数の画像を一括処理できるようにし、繊維状と判断した粒子については屈曲に沿った長さを測定できるように設計。粒子の色情報は、対象となる粒子画像が持つ平均的なRGB(三原色)値と、設定した基準色のRGB値との対比から求めた。AI(人工知能)で色を識別するオプションも作成した。
こうした結果などから、同社はNR染色と波長の異なる励起波長を組み合わせることで、従来法では困難だった繊維状MPsの材質を推定し、一部については材質別に分析が可能な技術を確立した。この手法はナノサイズなど、より微小サイズのMPs分析にも有効とし、開発したツールによって繊維状MPsのより正確で迅速・効率的な計測が可能としている。今後はMPsに当てる励起波長や撮影条件を最適化して材質判別の精度を高めるとともに、AI活用の高度化を含め、MPsの材質推定から計測まで一貫して自動化することを目指す。