【新聞記事】5スペクトル画像を処理・統合/植生判読を効率化/外来種対策活用も
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いであは、5つの波長域(スペクトル)の画像を取得できるマルチスペクトルカメラをドローンに搭載、波長ごとに撮影した画像を処理し統合することによって、河川周辺の植生判読を効率化するとともに、植物の活性度を判定する技術を開発した。国土交通省東北地方整備局岩手河川国道事務所から受託した調査業務で提案・実施した。スペクトルの組み合わせによって、特に侵略的外来種であるハリエンジュの分布を特定することが期待できるとしている。今後さらに解析技術を深化させ、植生調査の効率化・高精度化や外来種対策の立案などへの活用を進めていく考えだ。
国交省は生態情報の基盤として、全国の一級河川などで河川環境基図作成調査を実施し、植生図を作成している。その作成には航空写真から群落を識別する植生判読が不可欠だが、通常の写真では植物は緑色一色に見えるため判読は難しく、専門家の“職人技”的な要素を含むものとなっている。
このため、いであは植物が反射する波長は人間の目に見えない近赤外線の波長域が多く、緑色光の約4倍に当たることに着目。この情報を利用することで植生判読の効率化・高精度化が可能になるとして、岩手河川国道事務所の委託業務「北上川上流水辺現地調査(河川環境基図〈陸域〉)業務」で、ドローンに近赤外線の波長域を補足できるマルチスペクトルカメラを搭載して行う調査を提案し技術開発に取り組んだ。
撮影個所は同事務所管内の北上川上流区間の4カ所とし、1カ所当たりの広さは約400m×1000m、約20分の自動飛行モードで5つの波長ごとに撮影。写真は画像処理ソフト「PhotoScan」を用いて波長ごとの複数の写真を結合し、オルソ化(ゆがみ補正)した上で、3つの波長域を選択してスペクトル画像に統合した。
植生判読に最も有効な組み合わせを検討した結果、特にハリエンジュ(別名ニセアカシア)が特徴的なオレンジ色に発色することが分かり、この発色は撮影した4カ所で共通していた。他の河川への適用はさらなる検証が必要だが、将来的にはマルチスペクトルカメラで撮影さえすればハリエンジュの分布を特定することが可能になるという。
一方、植物の活性度は、植物の葉に含まれる葉緑素(クロロフィル)の質や量に依存しており、元気がない植物は葉緑素の質が低下。赤色光の波長を十分に吸収できず、近赤外線域の波長を反射できなくなる特性がある。このため、赤色光と近赤外線の波長を捕捉した写真を処理することで植物体に触れることなくリモートセンシングによって植物の活性度が判定できる。
これはNDVI(正規化植生指数)と呼ばれ、今回の調査では河川水位と地盤高の差が大きい場所に生えるハリエンジュの活性度が高い状況を確認できた。水の流路が固定され陸(高水敷)との高低差が大きくなることで、この外来種が強力に侵入している状況も示唆されている。
同社では、NDVIによる解析は、葉緑素を持つあらゆる生物に適用可能であることから、海域や湖沼などに発生する赤潮やアオコ対策など多方面への展開を図っていくとしている。