【新聞記事】スマート水産業を支援/資源回復へ漁場見える化/いであ
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【九州・山陰沿岸でICT実証】
いであは、「スマート水産業」実現に向け、現場実証の観点から沿岸漁業の漁業者参加型漁場形成予測システムの実用化に取り組んでいる。ICTの積極活用によって沿岸漁業者が操業中に自ら海洋観測を行い、環境変化を把握。多数の漁船による観測データを同化した高解像度の海況予測モデルや電子操業日報などで対象となる漁場や操業情報を共有し、計画的・省力的な操業を実現するとともに資源評価の精度向上や資源管理に役立てることで持続可能な水産業の発展を支援する。
わが国の漁業・養殖業生産量は、1984年に1280万tのピークを迎えた後、90年代に激減し、2019年には3分の1以下の420万tまで減少。資源評価対象種の約半分の資源水準も低位と評価されている。こうした状況を受け、漁業法が70年ぶりに改正され、20年12月に施行された。水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化の両立を目指した改正のポイントとなるのが新たな資源管理システムの構築であり、資源評価に基づく持続可能な資源水準への回復だ。
新たな資源管理システムで資源評価対象種を拡大するには、漁獲情報収集体制の充実に加え、漁業者の理解とインセンティブが不可欠であり、漁業者が操業状況とともに環境変化を把握して活用できれば省力化や生産性・計画性の向上、技術継承や資源管理につながる。
このため、いであは17年度から九州西方沿岸域を対象に九州大学と福岡、長崎、佐賀3県の水産試験場などと、20年度からは熊本、鹿児島、山口、鳥取各県水産試験場などが加わって九州西方から山陰沿岸を対象に、ともに3年計画の共同研究事業を進めている。
具体的には、沿岸漁業者が操業中に超小型の水温・塩分・深度計(smart-ACT)で海洋観測を行い、自動化したデータ収集アプリで漁業者がスマートフォンにより海洋環境を見られるようにする。
また、ネットワークで自動転送し、多数の漁船による観測データを同化した高解像度の海況予測モデルにより、対象海域の水温、塩分、流況など、300mメッシュの高解像度画像をスマホで閲覧可能とすることで、漁場形成の短期予測に役立て、燃料費の節約や操業時間の短縮といった計画的・省力的操業の実現に寄与する。
さらに、電子操業日誌などで操業情報を電子化して情報共有し、きめ細かい漁獲データの自動収集によって、沿岸漁業対象種の資源評価の精度向上や資源管理に役立て、水産資源の持続的利用につなげていく。こういった産業のICT化は若手就労者の参入を促進し、担い手不足の解消にもつながることが期待される。
同社はこのほか、内水面での釣果報告を使った資源量把握・釣り場予測や、漁獲物の画像センシング、3Dスキャナーによる漁場の可視化・長寿命化、海のドローンなどによる漁場の見える化、環境DNA分析などにも取り組んでおり、持続可能な地域づくりの観点からもスマート水産業の推進に技術的側面から貢献していく。