【新聞記事】粘性土の侵食特性を解析/河床低下予測、倒壊リスク抽出/いであ
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いであは、陸上からの視認が難しい水中での粘性土層の分布を面的に把握する手法とともに、粘性土の侵食特性や土層構造を考慮した河床変動解析手法を開発した。今後、河床低下がみられる全国の河川をターゲットに、護岸や橋梁など構造物の倒壊といったリスクの早期発見や災害の未然防止に活用するよう積極的に提案していく。
粘性土層は河道に露出してくると洪水時など徐々に削られて侵食が生じる。橋梁などの周辺で侵食が進むと構造物が不安定となり、場合によっては倒壊する恐れも出てくる。わが国の沖積平野を流れる河川の下にはほぼ確実に粘性土層が存在するだけに、こうした問題は全国的に広がるが、粘性土層の侵食を考慮したシミュレーション法は確立されていないのが現状だ。このため同社は、国土交通省近畿地方整備局淀川河川事務所から受託した業務の中で、淀川水系宇治川を対象に、水中粘性土層分布と河床変動解析の調査・解析手法を検討した。
調査手法では、水中で超音波を発生させて河床面からの反射強度を記録するサイドスキャンソナーを採用。宇治川は水深の浅い個所があるため、小型サイドスキャンソナーをボートで曳航し、水中粘性土の面的分布を調査した。調査結果では反射強度によって色の明暗が現れ、暗い部分は粘性土層、明るい部分は砂礫(されき)層と推定。潜水作業による目視や船底につけた水中カメラにより、画像の色調と実際の低質の状況が整合していることを確認した。
さらに、構造物倒壊の可能性がある個所を予測するため、土層構造を考慮した河床変動計算手法として、既往の研究で開発した準2次元河床変動モデルを基に、粘性土の侵食特性や鉛直土層構造を考慮できるよう改良。砂や礫(れき)の移動には一般に使われる流砂量式を適用し、粘性土層の侵食速度は摩擦速度の3乗に比例する式を採用してモデルを構築した。
その精度検証のため、1975年から2018年までの長期的な河床低下を再現することで粘性土層の侵食速度式を逆算することができ、これをモデルに反映することで18年から43年後までの河床低下を定量的に予測、構造物の倒壊が生じる可能性のある個所を抽出できた。
同社は、河床変動予測にはさまざまな仮定条件を設定しており、予測精度の向上にはさらなる検討が必要としているものの、気候変動に伴い洪水発生頻度が高まる中で、粘性土層の露出に伴う問題が懸念される河川の調査・解析に今回の開発成果を積極活用していく考えだ。