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2021年 ニュースリリース

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マイクロRNAメチル化測定による早期がん診断技術開発について(その2)

当社と大阪大学産業科学研究所の谷口正輝教授、鷲尾隆教授、大阪大学大学院医学系研究科の石井秀始特任教授(常勤)らの研究グループは、1分子量子シークエンサー(注1)を用いて、膵がん、転移性大腸がん等の難治性消化器がんのマーカーであるマイクロRNA(注2)において、2種類の化学修飾されたメチル化塩基(注3)を直接同時検出することに成功しました。

この技術は、当社と石井秀始特任教授の研究グループが2019年に報告した、マイクロRNAのメチル化解析による難治性消化器がんの早期診断技術の開発(既報)への応用が期待されます。

本研究成果は、英国科学誌「Scientific Reports」に、9月29日(水)18時(日本時間)に公開されました。
https://www.nature.com/articles/s41598-021-98805-z

従来技術との比較・新規性

マイクロRNAの塩基配列と化学修飾を同時に調べるには、高額なMALDI型質量分析計などが必要であり、マイクロRNAを用いたがん早期診断法の普及のハードルとなっています。今回、トンネル電流を用いて1分子を識別することが可能な1分子量子シークエンサーを用いて、難治性消化器がんから採取したマイクロRNAの塩基配列と化学修飾を解析した結果、マイクロRNA分子中において、アデニンとシトシンの2種類のメチル化塩基を直接同時検出することに世界で初めて成功しました。

将来性

本研究成果は、化学修飾されたマイクロRNAの機能解明と難治性消化器がんの早期診断法の開発・実用化を加速し、難治性消化器がんの早期発見、早期治療につながる技術として期待されます。

関連記事

マイクロRNAメチル化測定による早期がん診断につながる技術開発について(2019年9月11日)

参考リンク

大阪大学研究ポータルサイト ResOU
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2021/20210929_1

〔注1:1分子量子シークエンサー〕

従来の塩基配列決定装置(シークエンサー)では、解析対象分子の化学分解やDNAポリメラーゼを用いたDNA伸長によって塩基配列を決定しています。RNAについては、逆転写酵素によりいったんDNAに変換する必要がありますが、変換によりRNA分子がもつメチル化等の化学修飾情報は失われてしまいます。また、DNA伸長の際に生じるリードエラーを完全になくすことはできません。

1分子量子シークエンサーは、化学分解やDNAポリメラーゼによる前処理を行うことなく、マイクロRNAの塩基配列とメチル化等の化学修飾情報を直接解析することが可能であり、分析時間やコスト面でも有利となることが期待されています。

〔注2:マイクロRNA〕

ゲノム上の遺伝子にコードされ、タンパク質に翻訳されない非翻訳RNAです。長い前駆体として転写されたのち、17~30塩基ほどの短い成熟型マイクロRNA(matured microRNA)となります。マイクロRNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)のタンパク質への翻訳を制御していることが明らかになっています。近年、細胞のがん化およびiPS細胞の初期化に関わるマイクロRNAが見出されたことから、医療分野においても注目されています。

〔注3:メチル化塩基〕

マイクロRNAは、他のRNAと同様にアデニン、シトシン、グアニン、ウラシルの4塩基で構成されています。細胞内のメチル化酵素の働きにより、4塩基に含まれるアミノ基などがメチル基に置換され、6-メチルアデノシンや5-メチルシトシンになります。特定のマイクロRNAの特定の位置の塩基がメチル化されている割合を測定することにより、腫瘍マーカーとして活用できる可能性が高くなりました。

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