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2019年 ニュースリリース

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マイクロRNAメチル化測定による早期がん診断につながる技術開発について

当社(いであ株式会社)と、大阪大学大学院医学系研究科の今野雅允 寄附講座講師(先進癌薬物療法開発学寄附講座)、石井秀始特任教授(疾患データサイエンス学共同研究講座)らとの共同研究の成果が、英国科学誌「Nature Communications」に2019年8月29日に掲載されました。

研究成果の概要

血液中に含まれるマイクロRNA(注1)のメチル化率(注2)を測定することにより、既存の腫瘍マーカー(注3)よりはるかに高感度、高精度にがんを検出可能な技術を開発しました。この技術を応用、発展させることによって、がんの発見、がんの種類、がん手術の予後の予測、抗がん剤の効果確認など、がんの治療に対する広範かつ高感度な指標となることが期待されます。

従来技術との比較、新規性

これまでにも、血液中のマイクロRNAの増減(量的変化)を指標としたがんの検出技術の開発が行われています。しかし、現在のところ1つのマイクロRNAの量的変化では安定した結果が得られにくく、複数のマイクロRNAを合わせて測定し、そのプロファイリングにより判定を行うアプローチが試みられています。本研究は、血液中のマイクロRNAの量的な変動ではなく、マイクロRNAの修飾状態の変化(RNAのメチル化率)を指標としたユニークな技術開発となっています。

将来性

本研究において、消化器がん患者様(胃がん、大腸がん、膵臓がん)および健常人の血液に含まれるマイクロRNAを抽出・精製し、質量分析計(MALDI-TOF/TOF、注4)を用いてマイクロRNAのメチル化率を測定しました。その結果RNAのメチル化率を指標とすることで各種消化器がんの検出が可能であることに加えて、従来の技術では検出が困難であったステージI、IIの早期段階の膵がんを含む消化器系のがんを高感度に検出することにより、早期発見、早期治療へつながる技術として期待されます。

〔注1:マイクロRNA〕

ゲノム上の遺伝子にコードされていますが、タンパク質に翻訳されない非翻訳RNAです。長い前駆体として転写されたのち、17~30塩基ほどの短い成熟型マイクロRNA(matured microRNA)となります。また、マイクロRNAは、メッセンジャーRNA(mRNA、伝令RNA)のタンパク質への翻訳を制御していることが明らかとなりました。その後、細胞のがん化やES細胞、iPS細胞の初期化にかかわるマイクロRNAが見出されたことから、医療分野においても注目されています。

〔注2:メチル化率〕

マイクロRNAは、他のRNAと同様にアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、ウラシル(U)の4種類の塩基で構成されています。細胞内に存在しているメチル化酵素の働きにより、これら4種類の塩基に含まれるアミノ基などがメチル基に置換されることが知られていますが、これまでマイクロRNA中のメチル化塩基の確認は行われていませんでした。特定のマイクロRNAの特定の位置の塩基がメチル化されている率を測定することにより、腫瘍マーカーとして使える可能性が広がりました。

〔注3:腫瘍マーカー〕

がんの診断に用いられる血液中のタンパク質などを腫瘍マーカーと呼びます。CEAやCA19-9などの腫瘍マーカーをがんの診断に用いていますが、がんの種類によっては、正しい診断が難しいケースも報告されています。

〔注4:質量分析計 MALDI-TOF/TOF〕

測定物質(ここでは抽出・精製したマイクロRNA)にレーザーを照射することによって得られたイオン化粒子の質量を測定する装置がMALDI-TOF/TOFと呼ばれる質量分析計です。測定物質とマトリックス物質と混合したのちに金属プレート上に塗布すると、マトリックス物質が測定物質(タンパク質・ペプチド)の脱離(飛散)とイオン化を促進し、高効率で測定が可能となります。このことを見出した田中耕一氏は、この業績でノーベル化学賞を受賞されました。このイオン化技術は、MALDI:Matrix Assisted Laser Desorption /Ionization(マトリックス支援レーザー脱離/イオン化法)と呼ばれています。


MALDI-TOF/TOFによるマイクロRNAの測定イメージ

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