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技術資料

DNA分析
-生物の種判別、遺伝的多様性の調査、蒲焼等の食品など-

【生態系保全への新しいアプローチ手法】
調査計画の立案からサンプル採集、分析手法の開発、
データ解析までトータルにサポートします。
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DNA分析とは、すべての生物が共通して持つ遺伝情報伝達物質であるDNAの塩基配列を読み取ることにより、個体、地域集団、種などさまざまなレベルにおける生物の違いを明かにする方法です。魚であればヒレの一部、陸上哺乳類であれば体毛や糞、植物であれば葉っぱ1枚といったような非常に少量のサンプルでも分析可能です。

DNA分析の利点

遺伝子の本体であるDNAを調べることによって、生物多様性に配慮した生態系の保全策を検討することができます。DNA分析は、対象となる生物を殺さずに調査することができるため、調査行為自体による生態系への悪影響を最小限に抑えることができます。

DNA分析の利点

調査事例-種判別-

この地球上には数百万種以上もの生物が生息しているといわれており、それらのほとんどが外見的な形や色などの違いにより区別されています。種の判別は生物や生態系を理解するうえでもっとも基本的な情報ですが、その中には同定に専門家レベルの経験を要するものや未成熟期には近縁種と区別できないものなども存在します。

また、社会的に注目されている食品の偽装問題の多くは、切り身などに加工されることによって同定に必要な形質が失われることで生じます。このような問題を解決する方法として、生物の外見的な情報に左右されないDNA分析は非常に適しています。

野生動物の毛や糞を使った種判別

哺乳類などを対象とした動物相調査では、種の確認手段として、実際に生物を捕獲するだけではなく、目視確認や鳴き声、足跡、巣跡などさまざまな痕跡を参考に種判別を行っています。しかし、これらは調査者の経験や調査時の環境条件などに影響されることがあり、最終的に種を同定できない場合もあります。

これらの痕跡的証拠に比べ、体毛や糞といった生物由来の“落し物”は、そこに“落とし主”である生物が生息していた確実な物的証拠となります。そこで、これら体毛や糞からDNAを抽出し、塩基配列を読むことによって、“落とし主”の種の判別を行っています。

野生動物の毛や糞を使った種判別

シラスウナギの種判別

養殖用のシラスウナギ(ウナギの稚魚)は、日本各地の河口域で採集されたニホンウナギ(ジャポニカ種)を使用していますが、その漁獲量は年によって大きく変動し、漁獲量の極端に少ない年では、1kg当たり100万円以上と価格が高騰します。このような背景の中、外見的には見分けのつかない価格の安い外国産のシラスをジャポニカ種と偽って販売する悪質なケースがたびたび確認され、養鰻業界で大きな問題となりました。そこで、この問題を解決するため、PCR-RFLP法と呼ばれる手法により、シラスウナギの種判別を行っています。また、蒲焼等のウナギ加工品を対象としたDNA鑑定にも対応します。

シラスウナギの種判別

琵琶湖産フナ類の種判別

琵琶湖にはニゴロブナ、ゲンゴロウブナ、ギンブナの3種類のフナがいます。ニゴロブナとゲンゴロウブナは琵琶湖の固有種で、とくにニゴロブナは琵琶湖の名産品である「ふなずし」の材料として珍重されています。これらのフナ類は、いずれも春から夏に湖岸のヨシ帯で産卵し、そこである程度成長してから沖へ移動するという生態特性をもっていますが、その様式はそれぞれの種ごとに異なっているといわれています。

近年、フナ類の漁獲量が最盛期の10分の1程度にまで急減し、環境および経済の両面で大きな問題となっています。フナ類を保全するためには、卵・仔稚魚期の分布や行動をしっかりと把握することが必要ですが、これら3種類のフナは卵や仔稚魚の段階では外見的に種を判別することができません。そこで、RAPD法と呼ばれる手法により現地で採捕した卵・仔稚魚の種を判別し、3種類のフナの初期生態について調査・研究を行っています。

琵琶湖産フナ類の種判別

その他の種判別の応用例

  • 外見的特長からの種同定が難しい生物における種の判別
  • 成体と幼生の形態が大きく異なるような生物における種判別
  • 体毛や羽、糞などの生体組織片を用いた種の判別
  • 切り身や調理加工によって外見的に種判別が不可能な食品などにおける種の判別

調査事例-集団構造解析-

形態的な分類では同種とされる生物でも、離島や山地、湖沼など地理的に隔離された集団では、個体の移動が制限された結果、その集団内の個体に共通した特徴的なDNAパターン(=種内変異)を持つことがあります。このような固有の種内変異をもつ集団は「地域集団」などと呼ばれ、生物種を保全管理するうえでの一つの単位とされています。種の遺伝的多様性を保全するためには、こうした地域個体群の存在の有無を調査し、おのおのの個体群を保全していくことが種全体を存続させるために非常に重要であると考えられています。

トカゲハゼの保全を目的とした遺伝的多様性の調査

  • トカゲハゼ
    トカゲハゼ

トカゲハゼは、日本では沖縄本島の中城湾沿岸に点在する泥干潟にのみ生息するハゼの仲間です。本種は、中城湾全体で1,500尾程度しかいないと推定されており、水産庁および環境庁のレッドデータブックにも掲載されている絶滅危惧種です。

そこで、本種の総括的な保全計画を検討するため、それぞれ地理的に離れた干潟からトカゲハゼを採集し、マイクロサテライト多型解析およびミトコンドリアDNAの塩基配列分析の2つの方法を用いて、本種が干潟ごとに遺伝的に異なる集団を形成しているのか、また、中城湾に生息するトカゲハゼ全体の遺伝的多様性はどのくらいあるのかを調査しました。

トカゲハゼの保全を目的とした遺伝的多様性の調査

養殖ドジョウが在来ドジョウに及ぼす遺伝的な影響に関する調査

  • ドジョウ
    ドジョウ

ドジョウ大分県内におけるドジョウの人工養殖は、山間の休耕田などを利用して行われています。そのため、その一部が用水路を経由して近隣河川に逃げ出してしまう可能性があります。これまでに養殖に使われていた人工種苗は、大分県外で採集された親個体を使って生産されたものであったことから、在来のドジョウとDNA配列が異なっている可能性があり、遺伝的多様性の保全の観点からはあまり望ましくありませんでした。

そこで、仮に河川に逃げ出しても在来ドジョウの遺伝的多様性を撹乱しないようなドジョウ種苗の生産を検討するため、大分県内の複数の河川から在来のドジョウを採集し、ミトコンドリアDNAの塩基配列分析を行いました。

養殖ドジョウが在来ドジョウに及ぼす遺伝的な影響に関する調査

その他の集団構造解析の応用例

  • 移植や放流事業における在来群と移入群との遺伝的な違いの確認
  • 島嶼個体群や生態型、品種のような種内変異型の識別(琵琶湖産コアユと海産アユ、など)

調査事例-個体識別-

一卵性双生児や栄養繁殖を行う植物などは、いわゆるクローンと呼ばれ、別々の個体でありながら完全に同じDNAを持っています。一方、有性生殖(オスとメスによる繁殖)を行う多くの生物は、父親および母親から受け継ぐ遺伝子の組み合わせが1通りではないため、たとえ兄弟であってもDNAは異なっています。このDNA上の差異を検出することにより個体の識別を行うことができます。実際に、ヒトでも同様の技術が親子鑑定や犯罪捜査における個人の特定などに利用されています。

ダム建設予定地におけるテンの生息個体数調査

【Aダム哺乳類生息調査業務(発注者: 国土交通省 B地方整備局 Aダム工事事務所)】

  • テン Martes melampus
    テン

テンは森林生態系を代表するイタチ科の陸上哺乳類で、環境影響評価における注目種の候補とされています。調査エリア内の生息個体数については、影響評価を行ううえでとても重要な情報であるにもかかわらず、既存の調査方法では正確に知ることができませんでした。

そこで、野外からテンの糞を回収し、糞に付着したDNAから個体識別を行う方法を開発し、テンの生息個体数の調査を行いました。本手法は個体を捕獲する必要がないため、個体を傷つけるリスクを回避することができるという大きな利点があります。

個体調査の流れ

その他の個体識別の応用例

  • 河川構造物上の魚道や野生動物用通路等に対する利用状況調査
  • 標識タグ等の使用が困難な生物に対する「遺伝標識」としての利用

お客様のご要望に応じて、調査計画の立案からサンプル採集、分析手法の開発、データ解析までトータルにサポートします。実験内容、お見積り等、お気軽にご相談ください。

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